けいおん!!に見る新しいマーケティング

 地デジ難視聴対策に惑わされて岡山でも見れると知らずに3話分録画しなかったけいおん。アニメ自体の面白さもさることながら、その作りの力の入れようにも注目せざるを得ない。

 私自身はそこまで力を入れてみているわけではないが、アニメ本編に出てくる製品が現実に存在するものでそれを特定している人たちがいる。これはそこまでリアルに作りこまれているということの現われであって、アニメを見るだけにとどまらない楽しみ方ができるということである。

 ある意味その商品の宣伝にもなるんじゃないかと思う。実際特定された製品の売上はちょっぴり上がっているんじゃないだろうか。

 アニメやドラマで特定の製品がタイアップされるという例はいくつもある。でもそれは、作品が放送されるより前にタイアップが発表されているものであって、明確な宣伝目的のものである。しかしけいおんの場合はまったく違って、商品の宣伝を意図しているわけではない点が異なる。さりげなく出てくるからこそ購買意欲が刺激されるということもあるだろう。

 これも一種の口コミであり、見る側に身近さを感じさせる一種の手法だ。あの人が使っているから自分も使ってみよう。感性の近い人が使っているなら自分にも合うだろう。

 「ほら、こんなにすごいものなんですよ、買いたくなるでしょう?」と勧められると人は相手の意図を読み取って警戒してしまう。ああこいつはこれを買わせたいんだなと思って身構えてしまう。相手が買おうかどうしようか迷っているときには、その意思を後押しする効果はあるものの、興味のない人に対しては逆効果である。

 その点口コミには衝動買いを誘発する力がある。

 けいおんの場合は商品の宣伝を意図しているわけではなく、おそらくスタッフのお気に入りの製品とかがアニメの中に描かれているだけではないだろうかと思う。しかしそれがリアルに描かれており、ある意味視聴者にアニメに参加する楽しみを与えている。既にどれだけのものを特定できるかが勝負となっている節もあるようだ。

 更に驚いたのは、製品だけでなく主人公たちのクラスの生徒(モブキャラ)が正確に描き分けられているらしいのだ。どうも名前までちゃんとあって整合性を持つよう配置されたりしているようで、どこまで気合入れて作っているんだとある意味惚れてしまう。

 普通主人公以外のキャラクターは場当たり的に描かれるものでしかないだろう。設定を作ったところでそれがどれだけ本編に登場するのかを考えると労力が無駄になってしまうことが予想されるからだ。

 にも拘らず細かく作る。逆に言えばそこまで作りこんでいるからこそ、熱狂的な視聴者がそれを見つけ出すというある意味当たり前な作り手と受け手とのコミュニケーションが成立するのだろう。そして熱狂的な支援者が存在すれば存在するほど、宣伝効果は増大していく。