就職活動における幻想をぶち破る

 就職活動は大学4年生になってからにしようとかいう話になってたんじゃなかったっけ? 12年春卒業生向けの説明会があったらしいけれども。あれは商社だけの話なのかねぇ……。

 それはともかく今回はいつになく長いかもしれない。

 企業側はどうせ採用するならよい人材をということで、他社より先に優秀な学生を確保したいという気持ちがあるから早く動こうとする。同じように学生も、よりよい条件の企業に就職したいという気持ちがあるから、より早く就職活動を行う。

 ただでさえ内定率が低く厳しい状況ということが言われている。ともすれば就職活動というのはイス取りゲームで早い者勝ちの勝負なのではないかという錯覚さえ覚えてしまう。実際、採用の枠は上限が決まっているわけなのでスピード勝負であることには違いない。

 しかし、単に早ければいいというものではない。企業の求めるニーズにマッチしていないと内定はもらえない。この点で、就職活動とはいかに企業に気に入ってもらえるかの勝負であるという勘違いも生まれる。いかに自分が優秀であるかをアピールし、気に入ってもらえれば内定をゲットできる、そんな幻想を抱いてしまう。

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 私はそんな幻想を抱いて合格発表前の就職活動を行っていた。だから失敗したのだろうと今では思っている。

 いかに自分が優秀かをアピールする。自分の長所は何々で、アピールポイントはこれこれで……。客観的に考えてこれをアピールするのは無理がある。自分のアピールポイントをひねり出したところで、上には上がいるのだ。だからアピールするところなんて自分には何もない、そんな思いがあってエントリーシート書くのが辛かった。

 そんなんだから面接のときも、自分なんかがやっていけるのか不安でたまらなくなり、ろくなことが言えてなかった気がする。今思い出しても最悪なのが、「ダメダメな自分ではあるけれども、相手は自分のいいところを見つけてくれて理解してくれる」という甘えである。半年くらい過去に戻って自分を殴りたい。なまじ面接官の人がにこにこしながら「リラックスしてやればいいよ」なんて言うもんだからそれにころっと流されたり。お前はどこのおこちゃまだというような甘えきった質問してみたり。思い出すだけで「あ゛〜っ!!」となる。

 まぁそんな感じで悶々としていたのだが、あるときふっと天啓が降りてきた。きっかけは何だったか忘れたが、チェス盤をひっくり返して見たのだ。ずばり自分が採用する立場だったらどうするかである。

 私が採用担当者であれば、なぜうちの会社を希望しているのか、どうしてこの仕事をやりたいと思ったのか、そしてうちの会社に入ってどういう仕事をしたいのかが知りたい。要は動機とやる気と将来のビジョンが知りたい。書類の段階でそれらが分からないと、あまり評価はよくはしないだろう。応募者が多ければ書類で落とさざるを得まい。

 長所だとか短所だとか、今までがんばってきたことだとか、捉え方次第でどうとでも書けるわけである。そこは本命ではなく、エントリーシート全体として一貫性が保たれているかを見る補助的なものという扱いだろう。私なら本命は上記3つとして選考する。

 こう考えるとエントリーシート作成がはかどった。方向性が決まりさえすれば、それに沿って書いていくだけなのだから。

 一般企業でしかも会計とは全く関係ない仕事をしていたのに、なぜ会社を辞めてまで会計士を目指したのか。どういう仕事をして、どんな会計士になりたいのか。そういう方向性で履歴書・エントリーシートを書いては送るという4日間であった。

 この戦略で書類選考をパスできるかは分からない。これでも通らないようならまた違う方向性で攻めていくしかない。もしくは、方向性はいい線いっているけれども、実際に書く内容をもっと洗練した方がいいということになるかもしれない。

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 話が盛大に逸れてしまったが、結局はどうアピールするかなのだ。企業の求める人物像に自分をすり合わせるのではなく、単に自分がやりたい仕事をアピールする、ただそれだけだ。

 変に媚びるから、入ってみたもののやりたいことと違ってすぐに辞めてしまうという事態が発生してしまうのではないか。そんなことになってしまうと、企業にとっても求職者にとってもいいことにはならない。むしろ双方が不幸になる。

 就職活動は簡単に行くものではない。人間同士に相性があるように、人と企業の間にも相性問題はついて回る。だからうまくいかなくて当然と考え、自分にマッチする企業が見つかればいいなと探して行けばいい。

 もっとも就職活動が芳しく行かない人の最大の原因は、「働きたくないけれども働かないとしょうがないから、せめて安定してるとこがいいな」という甘い考えにもあると思う。そんな甘えが、幻想を生み出し、就職活動を厳しいものに見せている。

 経済の厳しさを言い訳にせず、気持ちを切り替えて突撃するのが大事なのではないだろうか。