コミュニケーション能力って何ぞ

 どの法人の説明会に参加しても「コミュニケーション能力のある人」が欲しいという話が出る。人間生きていくうえで他人とのコミュニケーションは必要不可欠なものである。ということはここで挙げられている「コミュニケーション能力」とは、日常生活で求められるそれとは別次元のものを指していると考えるのが自然だろう。

 では彼らが言う「コミュニケーション能力」とは一体何なのだろうか。単なる意思疎通を行う能力に留まるのであれば、巧拙はあるかもしれないものの誰もができるはずである。

 コミュニケーションを言葉のキャッチボールと考えると、相手の投げるボールをきちんと捕らえる能力が必要だろう。聞く力というのは馬鹿に出来ない。相手の投げるボールをきちんと捕るというだけでもなかなか難しい。後ろに逸らしてばかりで相手をいらいらさせてはいないだろうか。相手の投げる変化球にきちんと対応できているだろうか。そう考えると一言に「聞く」といってもなかなかに難しい。

 一方、言葉のキャッチボールであるからには、こちらもボールを相手に投げる必要がある。相手の構えたところにまっすぐ投げられているだろうか。あさっての方向に投げてばかりで相手を疲れさせてはいないだろうか。

 うまいジョークを言って場を沸かせることがコミュニケーション能力ではない。普段何気なく行っている会話は、本当の意味で意思疎通が出来ているだろうか。

 そしてなにより、そもそもちゃんとボールを持っているだろうか。これが日常においてコミュニケーション能力は誰でも持ち合わせているものだと勘違いさせる要因かもしれない。

 自分と相手の間でやりとりされるボール。すなわち自分の意思。相手から飛んできたボールをキャッチして、そのまま横に投げ捨ててはいないだろうか。別に、何となく、何でもいいなどなど。その場の流れに任せて自分の意見を持たないことが多くないだろうか。

 昨日参加した説明会ではそのことを考えさせられた。「プロとして自分の意見を持て」、グサッときた。コミュニケーション能力云々といわれると、どうしてもトークスキルに目がいってしまいがちである。当然ボールの投げ方は重要なファクターではある。しかし、いかにボールの投げ方がうまかろうと、肝心の投げるボールがなければ宝の持ち腐れである。

 コミュニケーション能力を問う前提として、自分の意見をきちんと持つことが問われているということではないのだろうか。